マンション大規模修繕の発注方法のひとつに、「管理会社やコンサルティング会社に修繕設計を依頼し、それとは別に、工事会社に修繕工事を依頼する(設計監理方式)」という方法があります。このような設計監理方式では、競争入札がおこなわれます。つまり、複数の工事会社に見積もりを提示させ、管理組合・オーナーは、そのなかからもっとも条件の合う工事会社を選定するのです。
そこで問題となるのが、「談合」です。近年、大規模修繕に関する談合のニュースを見聞きすることが少なくありません。そもそも、談合とはどのようなことなのでしょうか?管理組合・オーナーにとって、どんな不利益があるのでしょうか?
ここでは、マンション大規模修繕の談合を解説するとともに、管理組合・オーナーができる対策についてお伝えします。
目次
談合とは?
談合とは、競争入札において、入札に参加する会社同士が事前に話し合い、工事を受注する会社や金額を決めてしまうことを言います。
マンション大規模修繕では、コンサルタントが特定の工事会社からバックマージンを受け取り、「形だけの入札」をおこなうことで、公正な競争を阻害したり、不当な利益を得たりといった談合が見受けられます。
大規模修繕における談合の例
ほとんどのコンサルタント・工事会社は、適切な手続きに基づいて工事を受発注していますが、一部では、談合などの不正な手続きで不当な利益を得るケースも存在しています。
2017年に、国土交通省は、マンションの管理組合や区分所有者向けに、「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を出しました。このなかでも、大規模修繕のコンサルタントと工事会社が結託し不適切な工作をおこなうことで工事費が割高になってしまっている事例がある、と注意喚起されています。
談合による管理組合・オーナーの不利益
では、マンション大規模修繕で談合がおこなわれると、どのような問題が起こるのでしょうか?つづいては、談合による管理組合・オーナーの不利益についてお伝えします。
工事費が割高になる
ひとつは、談合のない公正な競争入札で工事を受発注するよりも、工事費が割高になることです。
例えば、コンサルタントと特定の工事会社が結託していると、あらかじめ少なめに大規模修繕の見積もりを提案しておき、特定の工事会社が工事を受注・実施した後に次々と追加工事をおこなうことで、契約時をはるかに超える工事費を請求するということができます。
管理組合・オーナーからすれば、自分たちの知らないところで工事費が高くなるように不適切な工作がされ、気づかないうちに多額の工事費を請求されてしまうのです。
工事の品質が低くなる可能性がある
もうひとつは、談合により工事を受注した会社が技術力のない場合、質の低い工事を施されてしまうことです。
管理組合・オーナーからすると、低い金額で見積もりを出す会社があれば魅力的に感じるものでしょう。多少技術力に不安があっても、予算面を重視し、もっとも低い金額で見積もりを出した工事会社を選ぶかもしれません。そうした場合に談合があると、低い金額だから工事を発注したのに終わってみれば多額の追加費用を請求され、おまけに工事の出来にも納得ができないということになりかねないのです。
管理組合・オーナーができる対策
金銭面・技術面で不利益を生じさせる談合を防ぐために、ここからは、管理組合・オーナーができる対策を紹介します。
信頼できるコンサルタントを選ぶ
大規模修繕を計画するにあたり、コンサルタントに相談する時は、「本当に信頼できるコンサルタント」を選ぶようにしましょう。それには、次のような点がポイントになります。
1.過去に大規模修繕をコンサルティングしたマンション名と住所、担当した工事会社名を記載した管理実績表を開示しているか
2.管理組合・オーナーの立場になって、工事を受注した工事会社が提出した見積書に基づいて、工事内容のチェックをしてくれるか
3.自分の意見をはっきり言いつつ、それはアドバイスにとどめ、工事会社選定の最終決断については管理組合・オーナーの意見を尊重し、特定の工事会社を推薦することはしない
以上のポイントを満たしていれば、自分たちの利益よりも、管理組合・オーナーの利益を優先して大規模修繕を考えてくれる、信頼できるコンサルタントと言えるでしょう。
大規模修繕を工事会社に直接依頼する
大規模修繕工事を発注する時は、「設計監理方式」と「責任施工方式」という2つの発注方式があります。
「設計監理方式」は、管理会社やコンサルティング会社に依頼し、専門家のアドバイスを受けながら工事会社を選定する方法です。この方法では、不適切なコンサルタントがいた場合に談合が起こる可能性があります。
「責任施工方式」は、管理組合・オーナー自らが工事会社を探し、直接工事会社に大規模修繕を発注する方法です。この方法であれば、コンサルタントを間にはさまないため、談合が起こることはありません。談合の可能性をなくすとともに、時間や手間をかけて工事会社を探し、自分たちの力で工事会社を選び抜きたいという管理組合・オーナーには、責任施工方式による工事発注をおすすめします。
物事を疑う管理組合・オーナーでいること
管理組合・オーナーにとって、大規模修繕は不慣れなことです。だからこそ、専門的知識のあるコンサルタントがいれば、修繕工事の計画や実施を一任したいと思いがちです。しかしながら、必ずしもコンサルタントが管理組合・オーナーの利益を一番に考えているとは限りません。一部には、談合により、不当な利益を得ているコンサルタントもいるのです。
こうならないためには、管理組合・オーナー自身が大規模修繕の知識を身につけ、疑問点をひとつずつ解消しながら自発的に修繕工事の計画や実施に関わっていきましょう。