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共通仕様書とは何でしょう?大規模修繕工事の見積もりが高くなる“カラクリ”

マンション大規模修繕を計画する時には、複数の工事会社から見積もりをとること(相見積り)が一般的です。この時、同一条件で見積もりをとるために、工事業者に配布するのが共通仕様書です。管理組合・オーナーのなかには、「工事をするなら同一条件で見積もりをとるのが当たり前」と思う方もいるかもしれませんが、実は、ここにも修繕工事の見積もりが高くなるカラクリが隠れています。

ここでは、大規模修繕における共通仕様書の意味を解説するとともに、共通仕様書を使用する際のポイントについてお伝えします。

 

共通仕様書とは?

共通仕様書とは、工事内容や工事範囲・数量・面積などを記載する書類で、大規模修繕の入札に参加する工事会社が提示するものです。共通仕様書は、各工事会社から同一条件で見積もりをとる(相見積もりをとる)ために使用され、工事会社が単価を記入すれば見積もりが完成する書式になっています。

共通仕様書を使用する時は、主に①管理会社の上部団体で統一された書式でつくられているものを使う ②管理会社独自のものを使う ③設計事務所独自のものを使うパターンがあります。

 

共通仕様書のメリット・デメリット

共通仕様書のメリットは、管理組合・オーナーにとって金額面で工事会社を比較検討しやすいことです。

工事会社は、共通仕様書に基づき、同一条件で見積もりを提示してきます。これであれば、各工事項目の金額と合計金額の違いが一目瞭然になるため、管理組合・オーナーからすると、金額面を単純比較して工事業者を選定しやすく感じるでしょう。

しかしながら、これは、どの工事会社が見積もりを出しても金額面に大差がなく、場合によっては工事費が割高になる共通仕様書のデメリットでもあるのです。例えば、大規模修繕をおこなう時は何らかの形で足場をつくる必要がありますが、共通仕様書で「組み立て足場」と指定されると、工事会社はほかの方法で見積もりを提示することができなくなります。すなわち、「組み立て足場」よりもコストの安い「ゴンドラ足場」や「ブランコ足場」で工事ができたとしても、工事会社はそのアイデアを提案できず、あえてコストの高い「組み立て足場」を選ばざるを得なくなるのです。

このように、共通仕様書は、同一条件で見積もりをとることで各工事会社の工事費を比較しやすいメリットがありますが、同一条件で見積もりをとるからこそ、工事費が割高になりやすいというデメリットがあります。

 

大規模修繕は、工事会社により金額が大きく異なる

国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(令和3年度)」によれば、マンション大規模修繕の工事費は、戸あたり100125万円の割合が27.0%ともっとも多く、次いで75100万円(24.7%)、125150万円(17.4%)となっています。

(参照元 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省)

表を見てわかるように、大規模修繕は、25万円/戸以下~200万円/戸超までと、戸あたりの工事金額ひとつとっても金額に大きな開きがあります。もちろん、大規模修繕を手がけているマンションの規模や築年数・工事回数などの条件が違うため、単純比較することはできませんが、工法を工夫したり、工事の無駄を省いたりすることで工事のコストをおさえることもできるものなのです。

 

大規模修繕で共通仕様書を使用する際のポイント

たしかに、共通仕様書は、同一条件で各社の工事費を比較するのには便利です。けれども、同一条件で見積もりをとるからこそ、工事費が割高になる可能性も秘めています。

では、共通仕様書を使用する際にはどうすれば良いのでしょうか。その答えは、工事会社に共通仕様書を渡す際に、「一部内容を変更して各社の考えに基づく見積書でもOKですよ」と伝えておくことです。この一言があれば、工事会社はより良い工事をおこなうために、自社のアイデアを盛り込んだ見積もりが提示しやすくなります。工事の仕様が一部でも変更できるとなれば、当然、各社が独自に工夫を試みることで、工事全体のコストをおさえることもできるようになるはずです。

 

共通仕様書「一辺倒」から脱却すること

大規模修繕は、「同一条件で見積もりをとれる共通仕様書を絶対に使用すべき」ということはありません。むしろ、大規模修繕のコストをおさえたいのであれば、違う条件で見積もりをとったほうが、各工事会社のコスト削減への努力を促進しやすいものです。

大規模修繕を計画する時は、共通仕様書のメリット・デメリットを踏まえつつ、工事会社から見積もりをとる方法を考えましょう。