前回は、大規模修繕の工事費がかさみやすい理由について、業界の事情を踏まえながらお話ししました。工事費をおさえつつ、必要な修繕を施すためにとりわけ大事なのはマンションの現状を見極めることです。
しかしながら、それを管理組合・オーナーだけで判断するのは難しいです。どこをどのくらい修繕すべきなのかは、やはり修繕のプロに相談しながら決めるのが良いでしょう。
そこで、第2回目は、大規模修繕を成功させるポイントとして、信頼できる工事会社を選ぶ方法についてお伝えします。
目次
「工事経歴書」で実績をチェックする
工事経歴書とは、自社の工事実績を記載したもので、言ってみれば工事会社の通信簿です。学生の学業に対する頑張りや姿勢を知るのに通信簿が役立つように、工事会社の頑張りや姿勢を知るには工事経歴書を見るのが効果的です。
自社の工事実績を包み隠さずオープンにできるのであれば、自社のサービスや技術力に自信がある証拠です。逆に、「施工先の住所を記載していない」とか、「工事経歴書の開示を求めても見せたがらない」のであれば、その工事会社には注意が必要です。管理組合・オーナーが工事実績を確認しにくい状態にしているということは、そこに何らかの裏事情があると考えられます。
ですから、大規模修繕を依頼する時は、しっかりと工事実績を開示できる工事会社を選ぶようにしましょう。
実際に工事を手がけたマンションを見てみる
大規模修繕工事の技術力がなければ、どれだけコストを費やしてもきちんと補修したり、きれいに仕上げたりすることはできないでしょう。そうした工事会社の実力を知るには、実際にその会社が大規模修繕を手がけたマンションを見るのがおすすめです。
工事会社の中には、ホームページ上で工事経歴書を公開しており、そこにこれまで手がけたマンションの住所や建物名を掲載しているところもあります。掲載されている住所や建物名をインターネットで検索すれば、工事会社が大規模修繕を手がけた各マンションの様子を写真で見ることができます。
マンションの写真で工事の出来を比較してみれば、工事会社の技術力の有無を判断する参考になるはずです。
マンションの管理組合や住民に直接話を聞く
工事会社の手がけたマンションを見るのと同じように、そのマンションの管理組合や住民に直接話を聞くのも良い方法です。管理組合や住民と話せば、工事の様子や職人の姿勢など具体的な感想が聞けるでしょう。
ただし、直接話を聞く場合には注意が必要です。なぜなら、重層下請構造になりやすい建築業界では、一見すると、「元請け会社」と「下請け・孫請け会社」の判断がしにくいからです。つまり、話を聞いたマンションの管理組合や住民が、工事を請け負った会社(元請け)の感想を言っているのか、実際に工事を施工した会社(下請け・孫請け)の感想を言っているのか、わからないこともあるのです。
そうした構造や違いがあることも踏まえつつ、マンションの管理組合や住民から工事の感想を聞くようにしましょう。
工事の発注前に保証内容を確認する
信頼できる工事会社を選ぶには、工事の発注前に保証内容を確認しておく必要もあります。
大規模修繕が完了しても、時に建物の不具合により追加工事が必要になるケースがあります。そうした場合に、しっかりとした工事保証がなければ、不具合が発生するたびに追加費用がかかってしまうのです。
例えば、防水工事として、外壁のシーリング材や目地の補修工事をしたとしましょう。また、工事会社は、「外壁のシーリング材や目地に不具合が生じた場合に補修工事をおこなう」という保証をつけていたとします。管理組合・オーナーからすると、この保証内容であれば、外壁から雨漏りが発生した場合に無償で補修工事をおこなってもらえると思うでしょう。しかしながら、このようなケースでは、外壁から雨漏りが発生しても無償で補修工事をおこなってくれないこともあるのです。それは、外壁そのものから雨漏りが発生した場合です。理由は、工事会社が保証をつけたのは「外壁のシーリング材や目地の不具合が生じた場合」であって、「外壁そのものに不具合が生じた場合」ではないからです。これでは、本当の意味での工事保証とは言えないでしょう。
このように、大規模修繕では、工事保証を付けていたとしても、不具合があった時にちゃんと機能するとは限らないのです。だからこそ、工事完了後もしっかりサポートしてくれるかどうかも、信頼できる工事会社を見極める目安になります。工事の発注前には、工事内容に加えて、具体的な保証内容もチェックするようにしましょう。
大規模修繕を成功させるには、工事会社をよく知ること
「大規模修繕会社」と一口に言っても、社内体制やサービス内容はさまざまです。ですから、大規模修繕を依頼する時には、その工事会社をよく知ることが大切です。
2回にわたって、大規模修繕を成功させるポイントについて解説してきました。まとめますと、マンションの大規模修繕を成功させるには、「マンションの現状を見極めて信頼できる会社に工事を依頼すること」です。
適正な価格で、納得のいく修繕ができるように、工事の必要性の検討と工事会社の選定を慎重におこないましょう。